だいすうにっき

日々の雑記

位相空間を理解したい②

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2話目

前回の続き書きます。

初めて学ぶトポロジー(石谷茂 著)

studyalgebra2.hatenablog.com

理解の流れ

数学の基本的な「集合」から初めて「位相空間」の定義と理解までをゴールとする。
流れは、「実数の集合」→「n 次元ユークリッド空間」→「距離空間」→「一般位相空間」となっている。

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前回は、集合の基礎から始まって、実数を定義し、更に実数の空間という舞台で実数の点列や関数の定義を並べるところまで進めた。今回は、これらを土台に位相空間を公理的に定義するための柱を積み上げていく。

6章 距離のある空間

目指すゴールは一般位相空間を定義することだった。そのために「空間」というものを5章から引き続き探っていきたい。空間を考える上で外せないのが「距離」の概念である。本章では「距離」とは何か、「距離」を再定義するところから始める。

ユークリッド空間での距離を定義する

まずは具体から入っていく。ユークリッド空間を考えよう。ユークリッド空間では「距離」とは以下の3条件を満たすものと定義されている。

ユークリッド空間における距離

  1. どんな2点  A, B をとっても  \overline{AB} \geqq 0
  2. どんな2点  A, B をとっても  \overline{AB} = \overline{BA}
  3. どんな2点  A, B をとっても  \overline{AB} + \overline{BC} \geqq  \overline{AC}

この   \overline{AB} d(A,B) と表し「距離関数」と呼ぶ。

改めてこの距離関数を定義する。

距離関数

空間  X において、以下を満たす  d(x, y) を距離関数とする。
1.  \forall_{x,y \in X} d(x, y) \geqq 0
2.  \forall_{x,y \in X} d(x, y) = 0 \Leftrightarrow x = y
3.  \forall_{x,y \in X} d(x, y) = d(y, x)
4.  \forall_{x,y,z \in X} d(x, y) + d(y, z) \geqq d(x, z)

更にもう少しユークリッド空間で距離について考えていく。
まず、ユークリッド平面  \mathbb{R}^2 上の点と、2つの実数の組  (x, y) は一対一対応する。ユークリッド平面  \mathbb{R}^2 を、  \mathbb{R}^2 = \mathbb{R} \times \mathbb{R} のような空間として考えるところから始める。

 \mathbb{R}^2 上の2点  x = (x_1, x_2), y = (y_1, y_2) において、 x y との距離を  d(x, y) = \sqrt{(x_1 - y_1)^2 + (x^2 - y_2)^2} と定義することに決める。
この定義した  d(x, y) は上記の距離関数の定義を満たすので、距離関数である。またこの定義した  d(x, y) を「ユークリッド距離」と呼ぶことにする。

つまり、「ユークリッド空間」というのは「空間  \mathbb{R}^2ユークリッド距離を導入した空間」と言ってしまえる。
一般化すると「 n 次元ユークリッド空間 \mathbb{R}^n 」というのは「空間  \mathbb{R}^n の任意の2点  x = (x_1, x_2, ... x_n), y = (y_1, y_2, ... y_n) に、距離  d(x, y) = \sqrt{(x_1 - y_1)^2 + (x_2 - y_2)^2 + ... +  + (y_n - y_n)^2} を導入した空間」と言ってしまえるのだ。

距離空間を定義する

ここまでで、ユークリッド空間に距離関数を導入した。これを一般化して距離空間として定義する。

距離空間  (X, d)

ある空間  X があってそこに距離関数  d(x, y) を導入したとき、この空間を「距離空間」と呼ぶ。

同じ空間を扱っていても、そこに与える距離関数は無数にあり、与える距離関数によって異なる距離空間が生まれる。いくつか例を挙げてみよう。

距離空間の例を見る: その1

1次元ユークリッド空間  \mathbb{R}^1 で、距離関数を  d(x, y) = |x - y| とする。この定義をそのまま保ち、2次元ユークリッド空間  \mathbb{R}^2 で、 d'(x, y) = |x_1 - y_1| + |x_2 - y_2| を定義すると、この  d'(x, y) も距離関数となる*1

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距離空間の例を見る: その2

ある空間  X で、
 d(x, y) = \begin{cases}
    1 (x \neq y) \\
    0 (x = y)
  \end{cases}
を定義すると、この  d(x, y) も距離関数となる。

距離空間の例を見る: その3

ある空間  X で、ある距離関数  d(x, y) を定義し、
 d'(x, y) = \frac{d(x, y)}{1+d(x, y)} を定義すると、この  d'(x, y) も距離関数となる。

距離の同値を定義する

このように様々な距離空間があるので、次は距離の同値という概念が欲しくなる。

等距離写像

ある空間  (X, d) と空間  (X', d') において、 X から  X' への写像  f全単射のとき、 X X' は一対一対応である。
この写像  f によって  X の元  x, y にそれぞれ  X' の元  x', y' が対応したとする。
このとき  d(x, y) = d'(x', y') ならば、この写像  f を等距離写像という。

つまりは  (X, d) (X', d') は、 d(x, y) = d'(f(x), f(y)) を満たすならば、写像  f のもとで同一の距離空間と見なしてよいということになる。

距離空間の諸概念を定義する

本章の最後に、距離空間  (X, d) でいくつか定義をしておく。2次元ユークリッド空間で扱う円周、円、直径の概念を、一般化した距離空間で定義する。

 S(a;r)

 a を定点、 r を正の実数とするとき  \{x | d(a, x) = r\} をみたす  x の集合を球という。

開球体  V(a;r)

 a を定点、 r を正の実数とするとき  \{x | d(a, x) < r\} をみたす  x の集合を開球体という。

球体  B(a;r)

 a を定点、 r を正の実数とするとき  \{x | d(a, x) \leqq r\} をみたす  x の集合を球体という。

直径  \delta(A)

距離空間  (X, d) のある部分集合を  A とする。 A の任意の2点を  x, y とするとき  sup\{d(x, y) | x, y \in A\} をみたす  x A の直径とする*2

距離空間  A, B の距離  d(A, B)

距離空間  (X, d) のある部分集合を  A, B とする。 A, B の任意の2点をそれぞれ  x, y とするとき  inf\{d(x, y) | x \in A, y \in B\} A,B の距離とする*3

定義から分かるように  B = S + V の関係になっている。

7章 点の個性を位相的にみる

本章では距離空間で近傍を再定義する。というのも、一般位相空間を定義するのに必要なのが「近さ」の概念の定義だ。近さといえば距離。だけど、ゴールの一般位相空間は距離の概念なしで近さというものを定義している*4。…って、どうゆうこと?

本章では「限りなく近い」というのを考えていく。6章で定義した距離空間、距離関数はいったん置いて、距離に関係ない「近さ」について考え公理的に定義することを目標とする。5章までで点列の「近傍」と「極限」を扱ったが両者の概念は本質的には同じである。近さについて考えていく上でのヒントがこの近傍と極限。まず、近傍を糸口に諸概念を定義し直す。そして最後に極限も見ながら、「近さ」の概念に迫る。

距離空間の近傍を定義する

まずは実数の集合である空間  \mathbb{R}^2 での近傍を見ていこう。
 \mathbb{R}^2 において  a の近傍  U(a) は開区間  (a - \epsilon, a + \epsilon) のことだった(ただし  \epsilon > 0)。この開区間 \{x | |x - a| < \epsilon \} と同意味で、さらに  \{x | d(a, x) < \epsilon \} とも書ける。

これらを一般化して、距離空間における近傍を定義する。

 a の近傍  U(a; \epsilon)

距離空間  (X, d) において、 \{x | d(a, x) < \epsilon \} をみたす  x の集合を  a の近傍という。

ここで距離空間  (X, d) a の近傍の性質を整理しておく。

距離空間  (X, d) a の近傍の性質

  1.  a \in U(a; \epsilon)
  2.  \epsilon < \epsilon' \Rightarrow U(a; \epsilon) \subset U(a; \epsilon')
  3.  \forall_{b \in U(a; \epsilon)} \exists_{x \in U(b; \epsilon)} x \in U(a; \epsilon)

近傍を分類する

次に、距離空間における点の近傍を分類してみる。点の近傍のあり方を考えることによって「近さ」の概念の理解を進めたい。
距離空間  (X, d) において、その部分集合  E があるとする。このとき  (X, d) 上の点  a は、  a の近傍に  E の点がどのように分布するかによって分類することができる。

内点

 a \epsilon 近傍から十分小さなものをとるとその近傍が  E に含まれるとき、点  a E の内点という。 すなわち、適当な  \epsilon を取れば  U(a; \epsilon) \subset E となるときの  a E の内点という。

外点

内点の定義を  E の補集合にあてはめたもの。 すなわち、適当な  \epsilon を取るとその近傍が  E の補集合に属するならば  a E の外点である。

境界点

内点でも外点でもない点のこと。

内部  E^i

 E のすべての内点の集合。

外部  E^e

 E のすべての外点の集合。

境界  E^f

 E のすべての境界点の集合。

触点

内点と境界点の条件をみたす点。

触集合(閉包)  E^a

 E のすべての触点の集合。

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これらの定義から、それぞれの分類において以下の関係が成り立つ。
距離空間  (X, d) においてこの空間内の点を  x とおくと以下が成り立つ。

  •  x \in E^i \Leftrightarrow d(x, E^c) > 0
  •  x \in E^e \Leftrightarrow d(x, E) > 0
  •  x \in (E^i + E^f) \Leftrightarrow d(x, E) = 0
  •  x \in E^f \Leftrightarrow d(x, E) = 0 \land d(x, E^c) = 0

開集合と閉集合を定義する

距離空間で近傍を定義したので、続けて開集合と閉集合も同様に一般化して定義していく。

開集合  O

距離空間  (X, d) の部分集合  O をとる。集合  O が、 (X, d) 上のある点 x の内点のみから成り立っているとき、この集合  O を開集合とする。 すなわち  O^i と同値である。

閉集合  A

距離空間  (X, d) の部分集合  A をとる。集合  A が、 (X, d) 上のある点 x の触点をすべて含むとき、この集合  A閉集合とする。 すなわち  A^a と同値である。

また定義から開集合のもつ性質を整理してみる。

開集合の性質

距離空間  (X, d) において、以下が成り立つ。
1.  X, \emptyset は開集合である。
2.  O_1, O_2が開集合ならば、 O_1 \bigcap O_2 も開集合である。
3.  O_1, O_2が開集合ならば、 O_1 \bigcup O_2 も開集合である。

上記の性質は閉集合でも同様に成り立つ。
また、 E閉集合であることと  E^c は開集合であることは、常に必要十分条件である。

最後に孤立点と集積点の定義もおさえておく。

孤立点

距離空間  (X, d) の部分集合を  E E 上の点を  a とする。 a \epsilon 近傍に  E の点は  a 以外に1つも存在しないとき、この点 aE の孤立点という。

集積点

距離空間  (X, d) の部分集合を  E E 上の点を  a とする。 a のどんな  \epsilon 近傍にも  E の点少なくとも1つ以上含むとき、この点 aE の集積点という。

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定義から  E の触点は、孤立点か集積点のどちらかである。また、 E閉集合であることと  E の集積点がすべて  E に含まれることは、常に必要十分条件である。

極限を定義し、近傍との相関を見る。

さて、ここまでで近傍についてまとめ終わったので、最後に極限の概念についても考えていく。

5章で、実数の空間  \mathbb{R} の点列  a_1. a_2, ..... \alpha に収束するとは、   \lim_{n \to \infty} |\alpha - a_n| = 0 と表せた。これを距離空間で一般化して定義する。

距離空間における収束の定義

距離空間  (X, d) における点列  a_1, a_2, ... (X, d) 上の1点  \alpha に収束するとは、   \lim_{n \to \infty} d(\alpha, a_n) = 0 が成り立つことである。
すなわち、任意の正数  \epsilon に対して適当な番号  N が選べて  n > N \Rightarrow d(\alpha, a_n) < \epsilon となること。
これを   \lim_{n \to \infty} a_n = \alpha  a_n \rightarrow \alpha とも書き、またこの  \alpha \{a_n\} の極限点という。

近傍と極限の概念の相関を探る

最後の仕上げ、近傍のクラス分けした概念と極限の概念を照らし合わせてみよう。
距離空間  (X, d) において、 (X, d) 上の点を  \alpha とし、 (X, d) の部分集合を E とする。このとき、以下が成り立つ。

  •  \alphaE の内点である \Leftrightarrow \alpha に収束する任意の点列 \{a_n\} に対して適当な番号 N を選ぶと n > N \Rightarrow a_n \in E
  •  \alphaE の触点である \Leftrightarrow \alphaE に属するある点列 \{a_n\} の極限点になる
  •  \alphaE の孤立点である \Leftrightarrow \alpha に収束する E の点列 \{a_n\} に対して適当な番号 N を選ぶと n > N \Rightarrow a_n = \alpha
  •  \alphaE の集積点である \Leftrightarrow \alphaE の点列 \{a_n\} の極限点になる(ただし  a_n \neq \alpha)

次回へ続く

連続関数の一般化まで行きたかったけど1万字近くなってきたので今日はここまで*5。文字と数式ばっかなので、図とかあったほうが見やすいですね、あとで入れときます*6

今回は、ユークリッド空間から始めて距離空間を定義し、距離や近傍、極限などの諸概念を一般化した距離空間で再定義しこれらの性質や関係性を探っていった。次回は、さらに踏み込んで位相空間を定義するために要となる位相変換について見ていく。そして一様連続やコンパクトの理解を経て位相空間にたどり着きたい。

新装版 初めて学ぶトポロジー

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  • 作者:石谷茂
  • 発売日: 2019/08/23
  • メディア: 単行本

*1:この距離空間  (\mathbb{R}^2, d') では2点の x 座標の差と y 座標の差の和が距離となる。

*2:sup は上限のこと。

*3:inf は下限のこと。

*4:位相空間では 5cm も 5km も同じ意味になる。ゴム紐のように伸縮自在な空間では距離というのは無意味なのだ。

*5:前回と文字数ほぼ同じなのに、前回は5章分、今回は2章しか進んでない…

*6:後日入れました