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日々の雑記

位相空間を理解したい③

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3話目

前回の続き書きます。

初めて学ぶトポロジー(石谷茂 著)

studyalgebra2.hatenablog.com

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理解の流れ

数学の基本的な「集合」から初めて「位相空間」の定義と理解までをゴールとする。
流れは、「実数の集合」→「n 次元ユークリッド空間」→「距離空間」→「一般位相空間」となっている。

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前回は、ユークリッド空間から始めて距離空間として一般化して定義し、距離や近傍、極限などの諸概念を再定義してこれらの性質や関係性を探っていった。今回は、引き続き距離空間を扱う。そして、位相空間を定義するために要となる位相変換、一様連続、コンパクトの理解を進め、最後に距離空間での完備性についてまとめる。抽象度が高くなっていくので、具体も挟みながら地に足付けて確実に登っていこう。

8章 位相写像とはなにか

最終ゴールの確認をする。ゴールは、空間において「位相性」という概念を入れて、位相空間を定義することだった。今まで散々考えてきた集合と空間は何が違うか。どちらも点の集合であることは同じだが、この点に「遠い」「近い」を定量できるような概念を入れて始めて集合は空間と呼べるものになるのだ。この遠い近いを定量できるような概念をもっていることを「位相性」と呼ぶ。
数学的に位相性を定義すると、位相性とは「位相変換」によって変わらない空間の性質のことをいう。

本章では、これまで積み上げてき土台の上でこの「位相変換」について考えていく。
位相変換、わかりやすい具体だと伸び縮みするゴムなんかがある。詳しく見ると、繋がったところは繋がったままで、途切れたところは途切れたまま、という性質がある。この「繋がってる」「離れてる」とは数学ではどう定義すればよいのかを考えていこう。
数学用語では「繋がっている」は連続、連結と等しい。この定義の糸口は、前章まででやった「実数の連続性」と「連続写像(連続性が変わらない写像)」の2つ。これらを使ってまずは「繋がっているものは繋がったまま」「途切れたものは途切れたまま」を定義しよう。

距離空間における位相性を定義する

まずは実数の集合での連続の定義を振り返る。

実数の集合における連続

 X \subset \mathbb{R}, f: X \rightarrow \mathbb{R} とする。
 f a \in X で連続  \Leftrightarrow  (\forall_{\epsilon > 0} \exists_{\delta > 0} \forall_{x \in X} |x - a| < \delta \Rightarrow |f(x) - f(a)| < \epsilon)

これを一般化して距離空間  (X, d) における連続を定義する。

距離空間  (X, d) における連続

距離空間  (X, d), (X', d') において、 f: X \rightarrow X' とする。
 f a \in X で連続  \Leftrightarrow  (\forall_{\epsilon > 0} \exists_{\delta > 0} \forall_{x \in X} d(x - a) < \delta \Rightarrow d'(f(x) - f(a)) < \epsilon)
また、近傍を使って書き換えると、
 f a \in X で連続  \Leftrightarrow  f(a)\epsilon 近傍 U'(f(a); \epsilon) に対して a の適当な \delta 近傍 U(a; \delta) を選ぶと  f(U(a; \delta)) \subset U'(a'; \epsilon) とできること。

つまりは、 a の近傍が X'f(a) \in X' 近傍へ移ることを示している*1

上記の定義を元に距離空間における連続写像を定義できる。

距離空間  (X, d) における連続写像

距離空間  (X, d), (X', d') において、 f: X \rightarrow X' とする。
 f が定義域  X のすべての点で連続であるとき  f連続写像という。

ここまでで、連続写像は「繋がってるもの」は「繋がったまま」に移せることを保証した。
一方で、「離れてるもの」は「離れたまま」に移されることはまだ保証できていない。これを保証すれば位相変換を定義できる。
そのためには、連続写像  f の逆写像  f^{-1} も連続であれば「離れてるもの」は「離れたまま」を保証できる*2。証明は略すが、次の定義をみたすときこれを保証できるので、これで位相変換を定義できる。

距離空間  (X, d) における位相写像

距離空間  (X, d), (X', d') において、 f: X \rightarrow X' とする。
 f全単射であり、かつ  f f^{-1} が連続のとき、この  f を位相写像という。

この位相写像の性質をみたす写像が位相変換できる。
さらに用語の定義をする。

位相的性質、位相性

位相写像によって変わらない距離空間  (X, d) の性質。

同位相

距離空間  (X, d), (X', d') の間に位相写像 f が存在するとき、 (X, d) (X', d') は同位相と呼び、位相的に同一視できる。
これを  X \approx X' と記述し、また同位相は同値関係である。

位相性の具体例をみる

例1) 開集合  (-1, 1) \mathbb{R} f(x) = \frac{x}{1+|x|} により同位相。

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例2)  a, b, a', b' \in \mathbb{R} とし、任意の開集合  (a, b),  (a', b') は適当な一次写像により同位相。

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例3)  a, b \in \mathbb{R} とし、任意の開集合  (a, b),  (a, + \infty) は同位相といえるか。

  • 例1 より f_1(x) = \frac{x}{1+x} によって  (0, +\infty) \approx (0, 1)
  • 例2 より f_2(x) =x - a によって  (a, +\infty) \approx (0, \infty)
  • 例2 より f_3(x) =(b-a)x +a によって (0,1) \approx (a, b)

以上の3写像を合成して  f_3 \circ f_1 \circ f_2 によって (a, +\infty) \approx (0, \infty) \approx (0,1) \approx (a, b)、すなわち (a, +\infty) \approx (a, b) より同位相と言える。

位相性と開集合、閉集合であることの関係を調べる

本章の最後に、集合が開集合、閉集合であることが位相写像とどんな関係なのかを見ていく。というのも開集合は近傍を使って判別できる概念なので、何かしら関係が深そうだからだ。

連続写像が満たす開集合の条件

距離空間  (X, d), (X', d') において、 f: X \rightarrow X'X' の任意の開集合を O' とする。
 f連続写像 \Leftrightarrow  \forall_{O' \subset X'} f^{-1}(O') \subset X

連続写像が満たす閉集合の条件

距離空間  (X, d), (X', d') において、 f: X \rightarrow X'X' の任意の閉集合A' とする。
 f連続写像 \Leftrightarrow  \forall_{A' \subset X'} f^{-1}(A') \subset X

最後に、ある空間における2つの距離関数での同値を定義しておく*3

距離空間における距離関数の同値

集合  X で考えた2つの距離関数 d, d' は次のとき同値である。  \forall_{a \in X} \forall_{\epsilon > 0} \exists_{\delta > 0} (d(a,x) > \delta \Rightarrow d'(a, x) > \epsilon \land d'(a,x) > \delta \Rightarrow d(a, x) > \epsilon)

9章 一様連続とコンパクト

本章では、前章で定義した位相写像を更に深堀りしていく。本章の目的は、距離空間における連続な関数は、どんなときに「一様連続」となるか調べることだ。

連続写像について考察する

前章でやった連続写像の定義を振り返る。

距離空間  (X, d) における連続写像

距離空間  (X, d), (X', d') において、 f: X \rightarrow X' とする。
 f連続写像である  \Leftrightarrow  \forall_{x \in X} \forall_{\epsilon > 0} \exists_{\delta > 0} f(U(x; \delta)) \subset U'(f(x); \epsilon))

この式をよく見ると、  x の選び方によって  \delta の値が変わることが分かる。さらに  \epsilon の値によっても  \delta の値は変わる。すなわち  \delta x \epsilon に依存する値なので  \delta(x, \epsilon) と書くのが適切のようだ。
一方で、  x, \epsilon に依存せず  \delta を選べる写像も存在する。いくつか例を見てみる。

  •  x, \epsilon に依存して  \delta を選ぶ写像
    •  f: \mathbb{R} \rightarrow \mathbb{R}, x \in \mathbb{R} における  f(x) = \frac{1}{x}
    •  f: \mathbb{R} \rightarrow \mathbb{R}, x \in \mathbb{R} における  f(x) = \tan x
  •  x, \epsilon に依存せず  \delta を選べる写像
    •  f: \mathbb{R} \rightarrow \mathbb{R}, x \in \mathbb{R} における  f(x) = ax - b
    •  f: \mathbb{R} \rightarrow [-1,1], x \in \mathbb{R} における  f(x) = \sin x
    •  f: (X,d) \rightarrow (X, d), x \in X, A \subset X における  f(x) = d(x, A)

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ここで  x, \epsilon に依存せず  \delta を選べる写像を一様連続と定義する。

距離空間  (X, d) における一様連続写像

距離空間  (X, d), (X', d') において、 f: X \rightarrow X' とする。
 f が一様連続写像である  \Leftrightarrow  \forall_{x,x’ \in X} \forall_{\epsilon > 0} \exists_{\delta > 0} (d(x, x') < \delta \Rightarrow d(f(x), f(x')) < \epsilon)

コンパクトの定義から一様連続の定理までを追いかける

一様連続は極限操作が変換できるため、この性質は解析学で重要な概念らしい。解析学でなくても位相空間を理解するにもどうにも重要な概念らしい。次は、どんな条件を満たすときに一様連続と言えるのか、を見ていく。新しい定義や定理ばかり出てくるので、とにかく淡々と定義に忠実に追いかけていく。

コンパクトを定義する

閉集合の閉じ方の概念を距離空間で一般化してコンパクトとして定義する。

距離空間  (X, d) におけるコンパクト

距離空間  (X, d) において  X に含まれる全ての点列が必ず  X に属するある点に収束する部分列をもつとき  X はコンパクトである、という。
すなわち、「  X は有限集合」または「  X が無限集合のときその任意の部分集合はそれに属する少なくとも1つの集積点をもつ」といえる。

被覆を定義する

次は3章にてユークリッド空間における被覆を定義したが、これを距離空間で一般化して定義する。

距離空間  (X, d) における被覆  \Gamma

距離空間  (X, d) がその部分集合の合併で覆われるとき、その合併を被覆という。
すなわち、 E_{i} \subset X, i \in \mathbb{N}, \Gamma = \{E_{i}\}, X \subset \bigcup E_{i} を満たすような  \Gamma があるときこれを被覆という。

プレコンパクトを定義する

コンパクトの定義にさらに制限を加えて、任意の直径の部分集合を合併した部分集合族が全体を覆うプレコンパクトという概念を定義する。

距離空間  (X, d) におけるプレコンパクト(全有界)

距離空間  (X, d) において次を満たすような有限被覆  \Gamma が存在するとき  X はプレコンパクトである、という。
 \forall_{\epsilon > 0, i \in \mathbb{N}} \exists_{\Gamma} \Gamma = \{U_{i}\},  \delta(U_{i}) < \epsilon E_{i}
(※  \delta(U_{i}) は直径のこと)

プレコンパクトは距離空間  (X, d) だけでなくその部分集合にも条件をみたせば適用できる条件である。
さらに、距離空間  (X, d) ではコンパクトならばプレコンパクト、が成り立つ。

可分を定義する

7章でやった、有理数の閉包は実数と等しい( \mathbb{Q}^{a} = \mathbb{R} )という概念を距離空間で一般化したものを可分と定義する。

距離空間  (X, d) における可分

距離空間  (X, d) において、 X のある可算集合  E の閉包  E^{a} X と等しいことを X は可分、という。
すなわち、次の3つの条件を満たすとき可分といえる。
1.  E \subset X
2.  E の元は可算個。
3.  E^{a} = X

距離空間  (X, d) ではプレコンパクトならば可分である、が成り立つ。

第2可算公理を定義する

距離空間  (X, d) における第2可算公理

距離空間  (X, d) において、ある可算個の開集合族  \Gamma を選べば、 X のすべての開集合  O \Gamma の部分集合族の合併で表せること。
すなわち、 \forall_{O \subset X} O = \bigcup U_{i}, \Gamma = \{U_{i}\} ( O X の開集合)

このときの  \Gamma を「可算開基底」という。
さらに、距離空間  (X, d) では可分であることと第2可算公理をみたすことは必要十分条件である。

距離空間  (X, d) におけるリンデレーフ空間

距離空間  (X, d) が第2可算公理をみたすならば、リンデレーフ空間である、という。

ハイネボイルの定理を求める

以上の定義や関係性をまとめると「コンパクト  \Rightarrow プレコンパクト  \Rightarrow 可分  \Leftrightarrow 第2可算公理  \Rightarrow リンデレーフ空間 」となる。
すなわち「コンパクト  \Rightarrow リンデレーフ空間」といえる。この論理を使って次の定理を導ける。

距離空間  (X, d) におけるハイネボイルの定理

距離空間  (X, d) がコンパクトならば、X の任意の開集合の被覆は必ず有限の被覆を含む。

一様連続の定義を求める

やっと本章の仕上げに入る。

距離空間  (X, d) における一様連続の定理

距離空間  (X, d), (X', d') において、X がコンパクトであるとき、写像 f: X \rightarrow Y が連続ならば一様連続である。

つまりは連続写像において、定義域がコンパクトであるならば一様写像といえるということである。

10章 距離空間の完備性

前章で進めた一様連続などはいったん置いて、本章では「距離空間における完備性」を考えていく。位相空間を定義するための最後のピースがこの完備性だ。頂上まであともう一踏ん張り。
4章にて実数の完備性を定義した。これを一般化して距離空間における完備性を満たす条件を考えよう。

距離空間における完備性を定義する

4章でやった実数  \mathbb{R} の完備性の定義を振り返る。

実数  \mathbb{R} における完備性

実数の集合  \mathbb{R} がコーシーの定理を満たすことを、「  \mathbb{R} は完備(complete)である」という。

実数  \mathbb{R} におけるコーシーの定理

実数  \mathbb{R} の数列は、基本列ならば収束する。(逆も成り立つ)
なお、基本列とは  \forall_{\epsilon > 0} \exists_{N} (m,n > N \Rightarrow |a_{m} - a_{n}| < \epsilon) となる数列  \{a_{n}\} のことである。

これを距離空間  (X, d) で一般化して定義しよう。

距離空間  (X, d) における基本列

距離空間  (X, d) において、  \forall_{\epsilon > 0} \exists_{N} (m,n > N \Rightarrow d(a_{m}, a_{n}) < \epsilon) をみたすような点列  \{x_{n}\} を基本列という。

距離空間  (X, d) における完備性

距離空間  (X, d) において、点列  \{x_{n}\} は基本列ならば収束する。(逆も成り立つ)

更に、完備性について以下が成り立つ。

  • 距離空間  (X, d) において、コンパクト  \Rightarrow 完備である。
  • 距離空間  (X, d) において、コンパクト  \Rightarrow  X の任意の点列には部分列で基本列になるものが存在する。
  • 距離空間  (X, d) において、コンパクト  \Leftrightarrow プレコンパクトかつ完備である。

次回が最後

定理の証明は省いてしまったが、要点おさえつつここまでたどり着いた。
今回は、引き続き距離空間の中で、位相変換や一様連続、コンパクト、完備性などをまとめた。いずれもこれまでに定義してきた実数の集合やユークリッド空間を土台に考えてきた。
次回がやっと最後、距離空間の土台の上に、抽象度を上げて位相空間として定義してしまおう。

新装版 初めて学ぶトポロジー

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  • 作者:石谷茂
  • 発売日: 2019/08/23
  • メディア: 単行本

*1:x \in Xa の十分近くに選ぶことで f(x) \in X'f(x) \in X' に想定通り近くなってくれるというイメージ

*2:待遇の論理でそうできる

*3:前回、2つの距離空間における等距離写像を定義したが、これは同じ空間での距離関数の同値